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雨の中、傘もささずに歩く俺は惨めだった。

諦めきれないあの笑顔が、本当に届かなくなったのかと思うと、声にならない呻き声のような息が漏れて唇を噛み締めた。

譜面を入れたトートバッグもずぶ濡れだ。

やっぱり誰も…俺を好きじゃない。

「くっ…ぅ…ヒック…ぅゔ…まぁくん…まぁくんっ!」

歩みが止まって、空に向かって叫んでしまう。

人通りのない小道。

ポケットで携帯が鳴る。

ハッとして、慌ててケツポケットを弄った。

濡れた手から携帯が落ちそうになりながらも慌てて画面をタップする。

「はっ!はいっ!」

“ニノっ?!”

「なぁんだぁ~翔ちゃんかぁ」

“何だじゃねぇよっ!相葉くんが大変なんだっ!”

「はぁ?どっちかっていうと俺の方が大変なんだけど」

溜息混じりに呟く。

“中央病院に迎えるか!”

「はぁっ?!何?なんで病院?」

“事故に巻き込まれたらしいんだ”

え……

何?

事故?

事故って、あの怪我しちゃったり、死んじゃったりするヤツ?

ダランと落ちた腕の先で、聞こえないけど翔ちゃんが喚いていた。

俺は携帯を切り、ケツポケットにそれを押し込むと、濡れた前髪で前が見えないのをかきあげた。

急激に心臓がギウギウと変な音を立てて胸元から飛び出てしまいそうになる。

少しの吐き気をグッと飲み込んで、バシャバシャと雨の中、走って大通りに出た。

道路には降り止まない雨で出来た水溜りがたくさんあって、そこを車のタイヤが通るたびに激しく水飛沫をあげていた。

ザザァッと水を巻き込む音をさせて、車が行き交う。

そこへ片手をブンブン振り、タクシーを止めた。

運転手はずぶ濡れの俺をバックミラーで怪訝な表情を作り睨みつけてくる。

「あっあのっ!中央病院までっ!!急いでっ!!」

運転手は分かりましたと嫌そうに呟き、ハンドルを車道に向けて切った。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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