5

砂場だ。

一年生くらいの頃…

学生服のお兄さんに声をかけられた。

高校生くらいのスラっと背の高い人。

母ちゃんは、近くのスーパーに友達と買い物に行くから、ここで待ってろと公園に置いて行かれたんだ。

誰かが忘れていった砂場に落ちていたピンクのスコップで砂を掬っては山を作ろうとしたけど、暑い夏の日で、砂はサラサラで、ちっとも山にならない。

白いカッターシャツに黒いスラックス。

“一人?お母さんは?”

逆光

お兄さんの顔は思い出せないけど、俺はその人に手を引かれ公園を離れ、近くの団地の踊り場に連れて行かれた。

お兄さんはスラックスのベルトを緩めて、下着から盛った熱を出し、俺に言った。

“ペロペロしたら、お菓子あげるね”

俺は確か、その形に驚きながらも、一生懸命に、ソレをしゃぶった。

蝉が煩くて、その中に混じって母ちゃんの声が聞こえた。

“母ちゃんが呼んでる”

そう言うと、お兄さんは俺に白い液体を浴びせた。ポケットから飴を一つ。

頭を撫でながら

“ご褒美ね”

と言った。

お兄さんはそのまま居なくなり、俺は団地の階段を降りる。

ポストからチラシが散乱した場所で母ちゃんに出会い、飴をくれたよと言うと、俺を見て青くなり、何回もビンタされた。

警察に連れて行かれ、何があったか説明すると、身体に悪戯をされていないか検査する為、奥の畳になった部屋で丸裸にされておしりの穴まで開かれた。

母ちゃんが泣いて居て、俺は初めて悪い事をしたんだと…

気づいたんだっけ。

「天…天ちゃん…大丈夫か?」

今度はさっきの逆だった。

燕さんがうなされる俺を揺らして起こす。

俺は我に返って、だらしなく笑った。

「暫く見てなかったのになぁ…小さい頃…知らない男の人に悪戯される夢」

「夢…なのか?」

俺は苦笑いしながら首を左右に振った。

「悪戯されたのは本当。…再現VTRみたいにあの日の事を夢に見る。最近見てなかったんだけどな」

燕さんは俺の髪を撫でながら悩ましい顔をした。

「大丈夫だよ?別に…今も辛い記憶とかいうわけじゃないんだ。多分…」

燕さんはベッドから出てタバコに火を付けた。

紫煙が揺らいで、俺は目を細めてそれをボンヤリ眺める。

「天ちゃん…」

くるっと顔だけ振り返った燕さんがヘラッと笑って呟いた。

「やっぱお前さぁ…俺のモノになれよ」

その顔は、命令じみた言葉とは裏腹に懇願しているように見えた。

俺は俯いて手首のシルバーのバングルを見つめる。

半年あまりの恋は…

重さ20gにも満たない程のガラクタに変わってしまうのか…

俯く俺の目の前にタバコを咥えた燕さんが立っていた。

「燕さん…なんでそんな危なっかしい顔すんの?」

バングルに触れながらベッドに座り込む俺は燕さんを見上げ問いかける。

サラサラと流れる前髪の隙間から、ニッコリ優しい微笑みが見える。

店長の様な温かくて優しくて、誠実な幸せをくれそうな人が好きだ。

それなのに…殆ど真逆みたいな燕さんに引きずり込まれる。

この微笑みは偽物だって分かるのに…

この人の中は

寂しくて冷たい血が流れてる。

俺が手を伸ばすと、燕さんはゆっくり屈んでくれる。

咥えたタバコから立ち昇る紫煙。

両手で燕さんの頰を包む。

「寂しい顔」

俺が呟くと、燕さんはタバコを指先に預けてアハッとふざけたように笑った。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です