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大学の一限にはギリギリ滑り込んだ。

勉強なんて出来るような精神状態ではなかったんだけど…。

これは学生の本分だから仕方ない。と真面目に自分を律してみる。

シャーペンの頭をひたすらノックしてシンを全部出してはまた差し込んでノックするを繰り返す。

結局のところ、授業の大半は記憶に収まらなかった。

二限から授業のない俺は肩を落としながらカフェにいた。

いきなり訪れた燕さんに驚いて、店長と話してた、”顔が綺麗って言われる事を気にしてる”ってヤツも、揶揄う前に逃げられてしまったわけで…。

簡単にキスをするから、カッとなって心の声が漏れちゃったし。

バイでしょって、俺に構うなって…それがいけなかったの?

だって…全部本当の事じゃんか…。

俺は携帯を弄りながらもボンヤリしてしまう。

燕さんが悲しい目をして出て行った事ばかりが俺の頭の中を埋め尽くした。

あの人…マジで狡いよ。

自分は言いたい事を言うじゃないか。

“おまえは俺のだもん”なんて…簡単に…。

テーブルに脱力して強く額を打ちつけた。

「いったぁ…朝は後頭部、昼はおでこって、災難だよ」

テーブルに突っ伏した俺はひんやりと冷たさを感じ目を閉じようとした。その瞬間、携帯が鳴る。

ビクッと慌てて起き上がり画面を覗く。

「ん?店?」

俺は慌ててバイト先からの電話に出た。

「もしもし、幸田です」

「あ、天馬か?俺!泉だ。」

「店長っ!」

俺はパァっと曇った表情が明るくなるのを感じた。

電話越しの声にドキドキしているんだ。

「今、平気か?」

「あ、はい。大丈夫です。どうかしましたか?」

「今日、おまえ休みだよな?実は藤田くんが風邪引いちゃって、団体が入ってるから人手が足りなくてさ、もし都合つくなら助けて貰えないか?代わりに休みは取らすから」

「分かりました。大丈夫ですよ。特に用事もないですから。ぁ…」

「どうした?やっぱ予定あったか?」

「ぁ…いや…その…燕さんの…」

「ん?」

「てっ!店長が遊んでやれって言ったでしょ?だからっ!…だから、燕さんの連絡先…後でラインして貰えますか?」

電話越しに、店長がふわりと笑った気がした。

「了解。じゃ、夜は大丈夫かな?」

「は、はいっ!」

「宜しく!」

切れた電話を見つめていると、すぐにラインが入ってきた。

ビクッと身体が縮まって、言い出した筈なのに怖かった。

嫌われた?

いや、また来るって言ってた…

だから、俺が連絡したって、ちっとも変じゃないよね…

店長にお礼を返して登録した燕さんの番号を眺めた。

教室を出て自販機の前のベンチに座って、息を飲んで番号をタップした。

コール音ってこんなに大きかったかなぁ…

何だかソワソワする。

「はい…」

「ぁっ!あのっ…燕さん?俺です…天馬」

「マジかよ?天ちゃん?何かあったか?」

燕さんは、朝とは全く雰囲気が違っているように感じた。

「いや、あの…今朝…」

「あぁ…悪い…俺、変だったよな…」

「せっかく学生証…持ってきてくれたのに…何かあんな感じで、俺…」

電話口の燕さんは暫く黙っていた。

一瞬、通話が切れたのかとさえ思った。

「…本当に…学生証はついでだったんだ」

「え?」

「どうしても天ちゃんに会いたかったんだ…夜中に処理した仕事が…思ってたよりキツかったみたいで…おまえが居たら…落ち着くかなぁって、本当、偶然アレ見つけて…」

「…しょ、処理って…」

「うん…まぁ…それは…聞いて気持ち良い話じゃないから」

「…大人は我慢ばっかりなの?…泉店長が言ってました。」

「圭介が?ハハ…参ったな」

「今日…バイト終わりなら…俺…空いてますよ」

「天ちゃん?」

「気が向いたら連絡下さい。あ…気が向いたらで大丈夫です。じゃ。」

「てっ!ちょっ!」

俺は慌てる燕さんを無視して電話を切った。

ドキドキと走る心音と、カラカラに乾いた喉。

真っ赤になる顔面。

全身が熱い。

口を手で押さえながら前屈みにベンチに小さくうずくまった。

「気が向いたらとか…何様だょ…」

携帯を手にしたまま、頭を抱え込んだ。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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