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「なぁ…どんな技?それさぁ…マジックなら…俺、割と得意だからさ…仲良くなれるかなぁ…なんて…」

ヒクッと表情筋が引き攣る。

相葉雅紀と名乗った男は長い手足を持て余すように大きな翼に吊られるようにして部屋の中をバサッと一周した。

『マジックじゃありません。…そろそろ諦めませんか?』

人の良さそうな笑顔が印象的で、サラサラの前髪が揺れている。

俺は叫び出しそうになるのをグッと堪えてベッドから起き上がった。

何だかいつもより身体が軽い気がする。

スリッパを履いてベッドの方を何の気無しに振り返って、開いた口が塞がらなくなった。

「ぉ…おいっ!どうなってんだよっ!!」

グシャッと髪に指先を埋めながら頭を抱えた。

ベッドには横たわっている。

眠ったような顔をして…

俺が。

慌てて両手を見つめる。

何となくアニメや映画で観た事のある状態。

透過した状態にある自分に気絶しそうだった。

フラッと貧血にも似た眩暈。

そこにバサッと音を立てて俺を抱き止める天使、相葉雅紀。

『だっ!大丈夫ですか?!』

俺はその言葉に何とか意識を繋ぎ呟いた。

「だ…大丈夫なわけないでしょ…もう死にたいよぉ」

額に手を当てる俺に、天使は笑いながら言った。

『くふふ!もう死んじゃってますけどね』

その言葉を最後に、俺はどうやら気絶したらしい。

意識のない気絶の中で、意識を持って夢を見た。もうこの時点で矛盾だらけだ。

昨夜の強引な飲み会。

強い酒のロックを強制一気。

油の匂いと、脂の匂い。

吐き気と引き攣った作り笑顔に、猛烈な尿意を我慢し、永遠と繰り返される大した事のない武勇伝。

抜け出すタイミングを失い、一気と爆笑は続く。

パワハラ、モラハラなんて言葉が通用する企業なんて、所詮大規模な大手と言われる会社で、うちみたいなブラック丸出しの中小企業の更に末端みたいな会社じゃ通用するはずもなかった。

タクシー?

徒歩?

溝に向かって何度かの嘔吐と寒気…

あぁ鍵を何とか取り出して…

あぁだからだな、ジャケットだけ脱ぎ捨ててベッドに入ったんだっけ。

確か凄い汗で、胸が痛くて…めまいと頭痛で息をするのも難しくなって…

マジで死んだのか?俺。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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