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用意されたのは粉だった。

俺は恐る恐る相葉くんに問いかける。

「ねぇ、これ、ヤバい薬じゃないよね?」

「兄貴の色が口利きしてんだぞっ!ヤバいわけねぇだろっ!」

怒鳴ったのはツンツンヘアの彫りの深い男。

「客だ…上田」

制したのは色気満載の一番じゃらじゃらアクセサリーにまみれた男。

「亀…こいつ生意気だ」

「亀に任せとけって」

「中丸はうるさいっ!」

「なんだよっ!」

「やんのかっ!」

「静かにっ!…すまないねぇ。血の気が多くていけない。お前ら後で息も出来ないくらい遊んでやるからな」

「か、亀ぇ~」

「嫌ならお利口にしてくれよ…なぁ中丸」

亀と呼ばれた男は中丸の顎を掬い上げ唇が触れそうな距離で呟く。

「はいはい…分かったよ」

「まぁ~た亀は中丸ばっかり」

「妬いてるのか?上田だっていつも一緒に中丸を可愛がってるじゃないか。」

『ゴッゴホン』

相葉くんが真っ赤な顔で咳払いをする。

亀という男がニヤリと笑って、薬包紙に乗った薬を俺に差し出した。

「飲みな…♪シャンティなら何でも揃う…俺らは万屋…お代は後から…♪さぁ…気分はどうだ?」

軽く歌いながら薬包紙に乗った粉薬を顎を掴まれ飲まされた。

ドクンドクンと胸が鳴る。

痛い…背中が痛い!!痛いっ!痛いっ!!

「ぅぐっ!!カハッ!!ゴホゴホッ!いてぇっ!!いっ!ぐぅっ!!!」

『ニノっ!!息吸って!吐いてっ!!』

「何だよっコレッ!!!いてぇーよっ!やっぱ毒だったんだ!!死ぬんだっ!!俺っ!やっぱ死ぬんッ!!……っってぇ」

パチンと亀にデコピンされ蹲った。

「うるせぇ奴だな…てめぇとっくに死んでんだよ」

デコピン一発でなんて威力だよ!

蹲った俺は額を押さえながら亀を見上げた。

彼は意味深にニヤリと笑う。

畳んであった彼の羽が嬉しそうにバサバサ開いた。

羽の骨格あたりに鈴がピアスみたいに付いていて、リリンと鳴る。

パンと合掌して満足気に言った。

「お客さん、完成だ。じゃ、また金が出来たら払いに来い。副反応はさっきので終いだ。良かったなぁ。合わなきゃ三日三晩苦しむ奴も居る。♪シャンティなら何でも揃う…俺らは万屋…お代は後から♪…さぁ…飛べますよ?」

俺はゆっくり自分の背中を見た。

羽根を撫でると、くすぐったい。

何というか…ちょっと露骨に言うと、性器を触っているような気持ちになる。

『一度、自分で羽ばたきをイメージしてください』

相葉くんの言葉に、頭の中でイメージする天使を思い描いた。

バサァッ!と音を立てて翼が開く。

固く閉じていた羽に血が通うようだった。

それから、少し地面を蹴ると数センチ浮き上がった。

「と、飛べた…」

『おめでとうございます。無事に仕事が出来そうですね』

俺は不思議な感覚のまま相葉くんと店を出た。

「えっ!?何…コレ」

そこは街並み。

どこかの怪しいチャイナタウンの様な…

さっきまで雲だったじゃないか…

『見えますか?』

隣りを歩く相葉くんが微笑んだ。

「み、見えるよ。街だ…どうして…」

『薬で羽を完全体にしたので、ニノはもう中間区の者だと認められたんですよ。…そうでなければ中間区の街はどこも見えませんし、ただの雲が続くばかりです。』

「へ、へぇ…俺、今頭ん中パニックだよ」

『中間区はほとんど下界と変わらないです。ただ、住んでるのが天使というだけで、普段は皆、歩きますし、走ります。まぁ、たまに飛んでる人も見かけますが…大抵そういうのは…』

「おーいっ!誰かソイツ!捕まえてくれっ!!スリだっ!!」

遠くからの声。

勢いよく目の前を翼を使って飛んでいる男が横切って行く。

ソイツを相葉くんが一瞬にして取り押さえた。

背中に乗り、羽根をむしる勢いで後ろにキツく束ねる。

『あなた、スリは重罪ですよ?羽を失います』

「うぐッ!くそっ!!離せぇー!」

『離しません。…重罪です』

俺は呆気に取られてしまい、口が開いていたに違いない。

バタバタと小太りの男が息を切らせて走ってくる。

「ハァ、ハァ、助かったぁ~。あんがとよ!にいちゃん!」

『いいえ、羽は暫く使えないでしょうから』

そう言ってお縄になった男は小太りの男に引きずられるようにして消えて行った。

『ビックリしましたね。ごめんなさい。つまり、忙しく飛んでいるのはおおかた犯罪者が多いという話です。さ、行きましょうか?』

相葉くんは歩きだす。

赤い灯籠がズラリ並ぶ、煌びやかで不気味な街を。

著者

ninon

オリジナルの小説を書いていきます。 嵐さんの大ファンです。 黄色を愛でる幸せに生きています。 二宮和也Addiction... どうぞよろしくお願いいたします。 尚、このブログ作品はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ございません。

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